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がん検診の基本の「き」から、どんな検診をどこで受けられるか。また、なぜ検診を定期的に受けなければならないのか、広報6月号の特集でお伝えしました。
▶広報四條畷LIFE6月号はこちら(2~5ページに掲載)
定期的に検診を受ける意義などについてお話ししてくださった医師お二人のインタビュー、誌面に掲載できなかった分もあわせてこちらで紹介します!(※広報誌に掲載した内容も含みます)
ふくだクリニック 医師
福田 泰樹さん(内科・呼吸器内科/写真左)
福田 真理子さん(婦人科/写真右)
泰樹さん:社会的な面でも、家庭など個人的な面でも役割が大きい子育て世代、働き盛りの人たちにこそ受診してほしいと考えています。
私は60代ですが、それくらいの年代になると、周囲にがんで亡くなる人も出てくるので、がんという病気がだんだん身近に感じられるようになります。しかし、30~50代だと、なかなか現実味がないですよね。たとえば、「背中が痛い」という症状があったとして、若い世代で「がんかもしれない」と疑う人はほとんどいません。逆に私のように高齢だと「すい臓がんかも」と考えることがあります。
若い人は「がん」と聞いても実感がないかもしれませんが、症状や異常が出てから見つかるのでは遅いんです。治療をし回復するためには、症状がないうちに見つけることが大切です。家庭をもっていたり、仕事でも大きな役割を担っていたりする若い世代の人ががんになると、周囲への影響も大きく、また経済的な不安も出てきます。どの世代も検診を受けることが大切ですが、若い人たちにこそ受けて欲しいと思うのは、こうした理由からですね。
「自分は大丈夫だ」と思っている人、がんになっても仕方ないと思っている人…そんな人はいないとは思いますが、自分一人のことだけではなく、家族など周囲の人のことも頭に浮かべながら、検診を受けることを是非検討してほしいです。
泰樹さん:実は私の周囲で、検診を受け続けていると思っていた人が急にがんで亡くなった…というケースがありました。「たまたま4,5年受けていなくて、見つかったときには手遅れ」ということが、結構多いんですね。検診は100%確実とはいえず、小さな異常が見落とされる可能性もゼロではありません。前回の検診では見つからないほど小さかったががんが、知らないうちに大きくなることもあるんです。
腫瘍マーカーもありますが、値が上昇しないがんも結構あります。うちのクリニックで、初期のすい臓がんがわかった人がいましたが、腫瘍マーカーの結果は陽性ではありませんでした。特に大腸・胃・子宮頚がんは、検診を受け続ける方がより確実に発見できます。
真理子さん:女性のがんも同じです。子宮頸がんは、性交渉を1回でもしたことがあればなる可能性があるがんですが、発症までの期間にかなり幅があります。比較的若いうちに発症する人もいれば、最後の性交渉から10年、20年と経過した後でがんが確認されることもあるんです。
妊娠中に検診を受けて、それからもう2、30年たっているから大丈夫、ではないんですね。10年、20年子宮頸がん検診を受けていないという人は、注意が必要です。いつ見つかるかわからないがんです。どの世代も間隔をあけすぎず、2年に1回は受診したいですね。1回検診を受けたら、2年くらいは安心していいよ、という感覚です。
泰樹さん:昔と違い、がんが小さいうちに発見できれば、体に障がいを残さず治療することもできます。たとえば、ひと昔前だと、「胃がん=胃を切除」でしたが、今は初期であれば、胃の粘膜部分を削って終了するなど、体への負担も小さいです。大腸がんでも同様の治療があります。
真理子さん:子宮頸がんについても同じことが言えます。子宮頸がん検診は、がんの1つ手前の状態「高度異形成」の状態で見つけ治療することが主旨です。その状態や、ごく初期の子宮頸がんであれば、子宮頸部の異常な組織を取り除く「円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)」のみで治療できます。 子宮頸部をレーザーや高周波メス(電気メス)で円錐状に切りとる手術で、子宮の摘出はしません。術後に妊娠・出産が可能です。
泰樹さん:私は呼吸器内科が専門なので、肺がんについてお話したいと思います。喫煙しない人のがんは比較的ゆっくり進行しますが、逆に喫煙する人のがんは、大きくなるのが比較的速いです。喫煙者では、1年前になんともなかった人が、翌年すでに手遅れになっている、というような状況もあります。
喫煙は、発がん性物質を体に取り込む行為です。なので、肺や口腔・食道周辺など、たばこの煙の通り道のがんが多いことはよく知られています。ですが、実はぼうこうや尿路など、たばこの発がん性物質が排出される部位のがんも多くなります。
検診に加え、生活の中で注意することとしては「肺がんになりたくなかったら喫煙はやめること」、この一言に尽きますね。喫煙で増えるがんは山ほどありますが、減るがんはほぼありません。喫煙は、デメリットの方が多いうえに、副流煙を吸う周囲の家族などにも影響があります。副流煙にさらされている人ががんになるリスクは、さらされていない人の1.4倍というデータもあります。
真理子さん:子宮頸がん検診は対象年齢が若く、20歳からが対象ですが、若い世代の受診率の低さはかなり大きな課題です。これはどの世代にもいえることですが、内診台で検査する…ということに抵抗が強い人もいるかもしれません。ですが、そんなに痛い、苦しい検査ではありません。内診に抵抗が強い人などは、相談すれば、しんどくならない方法や器具を選ぶなど、多くの医師が配慮してくれると思います。「怖い」「痛い」「つらい」といったイメージだけにとらわれずに、とにかく一度医師に相談をしてほしいと思います。
また、性交渉を1回でもしたことがある人は、子宮頸がんの原因となるヒトパピロマウイルスに感染する可能性があるので、若い人たちはワクチンでも対応していく必要がありますね。
あとは、子宮頸がんに対する誤ったイメージ、偏見もなくさなければなりません。昔は「性交渉の経験の多い女性がなるもの」といわれることが多かったのですが、「1回でも性交渉をしたことがある人はヒトパピロマウイルスに感染し、なる可能性があるがんだ」というのが正しいです。
真理子さん:乳がんもほかのがんと違い、若い30代、40代から患者が増え始めます。9人に1人がなるといわれ、女性で最も多いがんです。治療もすごく大変です。早く見つかった方が治療の負担が少なくて済みます。
検診の対象となるのは40歳以上です。この年代の人は、2年に1回マンモグラフィ検査を受けることが、現状、一番乳がんのリスクを減らすと考えられています。20代、30代の人は、検診を受けなくても、自分で乳房を触ってみて異常がないかどうか確認だけでもしてほしいと思います。心配であれば、公費補助の対象ではありませんが、医療機関でマンモグラフィ検査を受けることは可能です。
泰樹さん:そういう人には、「検診で何か見つかったらラッキーだ」ということを伝えたいですね。先にもお話しましたが、症状が出てから見つかるのでは遅く、治療して回復できる人は本当に少ないです。そのことを思えば、無症状のうちに見つけることがベストです。
ただ、定期的に受診するのは実は本当に難しく、「来年でいいか」と思っているうちに数年過ぎていることもあります。対象年齢の皆さん、今年必ず受けましょう。その1回が、あなたを救うかもしれません。
真理子さん:比較的大きな企業などで働いている人は、職場で検診を受けられる機会があると思います。それを逃さないでほしいです。子育て中などで仕事をしていない、またパートタイムなどで職場で検診の機会がないという人は、自分で受診するしかありません。ですが、予約不要、夜間受診可能な医療機関もあるので、なんとか時間を見つけて受診してほしいですね。
いかがでしたでしょうか?
インタビューを読んで、「検診を受けてみよう」と思った皆さん!
こちらのページを参考に、ご自身にあった検診施設や医療機関を選んで受診してみてください。
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※がん検診の詳細については、保健センター(電話:072-877-1231)に問い合わせてください。