本文
四條畷市では、2017年9月から外部人材として大学生を登用し、行政の枠組みに囚われず、変革を起こすことを目的に、「長期インターンシップ制度」を導入しています。
インターンシップ生は、インターン生ブログの発信や、インターネット番組「なわチャン!」の立ち上げ、親子で利用しやすい店舗マップの制作、公園活用ワークショップの企画・運営、空き家管理データベースシステムの構築など、さまざまな業務で市の課題解決にあたっています。
より多くの方にインターンシップ制度について知っていただくため、過去に活動したインターンシップ生にインタビューを行いました。
今回は、市のPRとしてブログ作成や、大学での学びを生かした文化財の業務にも携わられた柘植健生さんに、現役インターン生(2021年2月現在)の植野凪沙がお話を伺いました。
〈プロフィール〉
4期生 2019年6月~9月活動
当時、大阪大学文学部美術史学専修3年生
・インターン生ブログ
・歴史民俗資料館の特別展の準備業務
などに携わった。
現在も、同大学に所属。来年度より大学院に進学予定。
―――まず、インターンシップをどのように知り、なぜ応募されたのですか。
柘植さん:大学の研究室の先輩である小原由子さん(インターン3,4期生)から話を聞き、四條畷市役所は、学生自身がやりたい仕事を任せてくれる環境であると思い、興味を持ちました。私は大学で美術史を専門に学び、芸術や文化に興味のない人たちにも、もっと文化財に関心を寄せてもらいたいという考えを以前から持っていました。四條畷市のインターンシップの環境ならば、これを実践的に取り組むことが出来るのではないかと考えて応募しました。
―――では、面接に合格し、インターンシップが開始されるにあたり、意気込みなど、どのようなことを考えていましたか。
柘植さん:今述べたように、このインターンシップでは文化財に関わる取り組みをしたいと考えていました。しかし、文化財は教育委員会の管轄であること、また、その時点で教育委員会に私のやりたい業務があるかどうか定かではなかったことの2つの理由から、私の希望は通らないかもしれないと告げられました。
―――え!そうだったんですか。それでは、なぜインターンシップに挑戦されたのですか。
柘植さん:学生のうちから行政に関わり、何かを一から取り組むことができる環境は滅多にないと思ったからです。挑戦するからには全力で何かを成し遂げようと意気込んで、このインターンシップに参加することを決めました。
―――では実際には、主にどの課の職員の方々と、どのような業務をされていましたか。
柘植さん:最初の1か月間は副市長やマーケティング監(当時、市のマーケティングを担当されていた西垣内渉さん)と関わりながら、市をPRするためのブログ活動をしていました。また、その中で、保健センターの職員にお話を伺い、子育て支援体制である「ネウボラなわて」の紹介や、都市整備部建設課の方々とコミュニティバスの再編に関するブログを作成しました。
―――ブログ作成に携わる中で、印象に残っている職員の方々はいらっしゃいますか。
柘植さん:建設課の方々が、市民の方々との関係の築き方を深く考えていらっしゃったことが印象深かったです。例えば、公園ワークショップを開催される際には、開催する地区によって異なる市民の雰囲気や打ち解け具合を常に意識して、議論をどこまで深めるかを考えて進行されていました。そのような市民の方々への真摯な向き合い方が印象に残っています。また、マーケティング監は、ブログ活動において、どのようにすれば読む人に喜んでもらえるわかりやすい文章が書けるか、また読む人に刺さるタイトルの付け方など鋭い視点でたくさんアドバイスをしてくださいました。
―――では、ブログ作成の業務以外に携わった業務はありましたか。
柘植さん:生涯学習推進課の職員とともに歴史民俗資料館の特別展に向けての業務に携わりました。2019年に開催された第34回特別展「重要拠点KARIYA―雁屋遺跡弥生時代拠点集落の変遷―」の準備業務に携わることができました。
―――入庁当初、希望していた業務に携われたのですね。特別展の準備は具体的にどのような作業をしたのですか。
柘植さん:展示パネルの貼り付けや市外に必要な展示物を借りに行くなど、職員のサポートをしました。また、特別展のパンフレットのレイアウトやフォントなどを考え制作しました。あとは、展示用の人骨を運んだり…
―――人骨!?本当に貴重な経験をされたんですね。その中で特に印象に残っている職員の方はいらっしゃいますか。
柘植さん:生涯学習推進課の實盛さんと村上さんです。歴史民俗資料館の特別展での業務において四條畷の文化財における良いところだけでなく、課題点まですべて見せていただきました。難しい内容になりがちな展示を、学術的な正確性を多少犠牲にしてでも市民にわかりやすく伝えようとする職員の熱心な姿勢や、市の文化財職員が特別展の準備に直接携わっていることには魅力を感じました。逆に課題点は、仕事量に対して職員の数が少ないことや、湿度管理などができる文化財保管庫が僅かしかないことですね。インターンシップは4か月間という短い期間でしたが、本当に貴重な経験ができたと思います。
―――では、市民の方々とどのような関わりがありましたか。
柘植さん:地域と市長の対話会の運営に参加させていただいたことがあります。そこでの市民の方々からの質問内容などをブログに関連させることができたことは、とても良い経験になりました。
―――対話会に関しては、たくさんのインターン生がお話にあげていますね!では、インターンシップをとおし、困難だったことや達成感を感じたことはありますか。
柘植さん:困難だったことは、やはりブログ作成ですね。先程も言いましたが、ブログを書き始めた頃は、マーケティング監の鋭い視点での添削により、原稿が真っ赤になるほど修正点が多い状態でした。ですが、その経験のおかげで、その後の特別展をPRするブログ作成において、どこをどのように切り取れば読む人に面白いと感じてもらえるか、常に読む人のことを考えながら言葉遣いを意識し、ブログを作成することができました。さらに、そのブログをマーケティング監に褒めていただいたときに達成感を感じました。
―――成長を認められた瞬間ですね。では、インターンシップをとおし、成長したと感じる点はありますか。
柘植さん:今までは専門的な勉強や研究で独りよがりになることが多かったんですが、ブログを書く経験をとおして、相手のことを第一に考えるようになりました。記事の内容に関して予備知識のない人が読んでも伝わる文章を作成できるように、と常に考えながら、言葉遣いを意識し文章を作成することができるようになりましたね。
―――では学生という立場ゆえの限界がある中でも、どのようなことに貢献できたと感じていますか。
柘植さん:インターンシップで形として何かを残すことはできませんでしたが、もともと文化財の業務は仕事量が多く人員が少ないので、展示パネルの貼り付けや特別展のパンフレット作成などを行ったことで、職員の方々に貢献することができていたら嬉しいです。また、特別展を訪れた人たちが、「見に来て良かった」と感じてくれていたらいいなと思います。
―――そんな柘植さんは現在、何をしているのですか。
柘植さん:今は大学4年生で、中国と日本の仏教美術の関わりについて学んでいます。今後は大学院に進学する予定です。
―――現在していることで、インターンシップの経験が生きていると感じることはありますか。
柘植さん:私は博物館学芸員をめざしているのですが、特別展での業務経験をとおして自分の進路に自信を持つことができました。また、行政やお金、政治についても考えるようになり、将来は文化財行政の改革や改善にも携わりたいという思いも芽生えました。
―――インターンシップをとおして新たな思いが生まれたんですね。では最後に、市役所内で働いてみて意外だったことや驚いたことはありますか。
柘植さん:実際に働く前は、市役所はお堅い場所というイメージを持っていました。しかし、いろいろなことに柔軟に取り組む職員の姿や、マーケティング監や副市長など、いわゆる「すごい人」と私たちのような一学生が、一対一で共に働く環境が存在することに驚きました。
―――このような柔軟性は、四條畷市ならではのものかもしれませんね。インターンシップではさまざまな職員の方々とともに働くことができるので、本当にたくさんのことに気づき、学ぶことができますね。私もこの経験を生かして自分自身の将来像を設計していきたいと思います。柘植さん、貴重なお話ありがとうございました。