本文
四條畷市では、2017年9月から外部人材として大学生を登用し、行政の枠組みに囚われず、変革を起こすことを目的に、「長期インターンシップ制度」を導入しています。
インターンシップ生は、インターン生ブログの発信や、インターネット番組「なわチャン!」の立ち上げ、親子で利用しやすい店舗マップの制作、公園活用ワークショップの企画・運営、空き家管理データベースシステムの構築など、さまざまな業務で市の課題解決にあたっています。
より多くの方にインターンシップ制度について知っていただくため、過去に活動したインターンシップ生にインタビューを行いました。
今回は、二期連続で一年間インターン生として勤め、デザインによる社会課題の解決に尽力された小原由子さんに、現役インターン生(2021年2月現在)の植野凪沙がお話を伺いました。
〈プロフィール〉
3,4期生 2018年11月~2019年9月活動
当時、大阪大学文学部美術史学専修4年生
・子育てマップ、庁内報、市の広報物の制作
などに携わった。
現在は、キッズプラザ大阪のワークショップスタッフ、webライター、叢書の誌面デザインや校正を担当している。
―――まず、インターンシップをどのように知り、なぜ応募されたのですか。
小原さん:もともと長期インターンシップに関心があり、自分が一から携わったアウトプットで、評価されたいという考えを持っていました。そんなときに、四條畷市×ICOLA×トビタテ!留学JAPANが2018年に開催した地域の社会課題を解決する「市民と考えるアイデアソン@四條畷市」に参加したことで、四條畷市のインターンシップの存在を知りました。また、もともとデザインに興味があり、デザインによって何らかの課題解決をしてみたいという思いから応募を決めました。
―――では、インターンシップ開始にあたり、意気込みなど、どのようなことを考えていましたか。
小原さん:出勤初日に、副市長からインターンシップについての思いなど貴重なお話を聞かせていただいたことで、自分に「何としても結果を残さなければならない」というプレッシャーをかけることができました。
―――では、インターン第3期に取り組まれた業務は何でしたか。
小原さん:3期生のときは、子ども政策課とともに「親子で利用しやすい店舗リスト&マップ」を制作しました。その際、冊子内で用いたアイコンやイラストの作成、印刷業者との打ち合わせなど、制作過程にほぼ一から携わりました。
―――とても可愛らしいデザインですが、何か専門的なデザインソフトなどを利用して制作されたのでしょうか。
小原さん:いいえ、利用していません。予算の都合上、そのようなソフトを購入することはできなかったので、冊子内の地図やレイアウトまですべてパワーポイントを利用して制作しました。パワーポイントでの冊子デザインは大変な作業だったので、「もう一度同じものを制作してほしい。」と言われるとなかなか厳しいかもしれません(笑)
―――そんな小原さんの大作ともいえる「子育てマップ」制作の際、印象に残った職員の方々はいらっしゃいますか。
小原さん:子ども政策課の小路さんです!私が編集やデザインを担当し、小路さんがマップ掲載店舗への営業面でサポートしてくださいました。
―――では、インターンシップを継続しようと決意したきっかけは何だったのでしょうか。
小原さん:一言でいうと、自分にもっとできることがあると考えたからです。私は、入庁当時、「デザインの力で市役所を変えていく」という目的を掲げていました。しかし、正直なところ、3期生のころは職場に慣れることと子育てマップの発行で余裕がなく、あまり多くの部署と関わるまでは至れませんでした。そのため、お世辞にも当初の目的を達成したとは言えない状況でした。不完全燃焼な思いを抱えたまま3期生としての任期満了を迎えようとしていたころ、私が取り組んだ業務を聞きつけた職員の方からイベントのポスターについてご相談をいただいたんです。その時、自らの仕事の成果によって人から信頼される喜びを見いだしたとともに、私を必要してくれている人がこの職場にはまだまだいると感じ、インターンシップの継続を決めました。
―――では、インターン第4期に取り組まれた業務は何だったのでしょうか。
小原さん:3期生の頃から担当していた庁内報(庁内で活躍する職員の方々へのインタビュー記事)に加え、保健センターの事業案内パンフレットの編集・デザインやイベントポスターなど様々な広報物の制作約40件に携わりました。3期生の反省を生かし、自分から庁内で人脈を作って仕事を見つけることを心がけました。
―――人脈を作ることはとても大事ですね。そんな第4期で印象に残っている職員の方々はいらっしゃいますか。
小原さん:まずは保健センターの大西さん、阿部さん、豊留次長です。私が担当する広報物の制作の約6割が保健センターの案件だったので、関わる機会が本当にたくさんありましたね。あとは、総務課の知花さんです。
知花さんは、庁内報の制作で最初に取材を受けてくださっただけでなく、納得できる記事内容になるまで何度もご意見をくださいました。この記事がきっかけで他の職員の方々も業務を任せてくださるようになりました。お名前を挙げたのは先の4名ですが、私を信頼し、ご依頼いただいたすべての職員の方々に感謝しています。
―――素敵ですね。そんなたくさんの職員の方々と関わられた小原さんですが、特に印象に残っている市民の方々との関わりはありますか。
小原さん:私の制作した保健センターの事業案内パンフレットを見た市民の方に「今年から見やすくなったね。」と伝えてもらったときです。「試行錯誤した甲斐があった。」と嬉しくなりました。
―――それは嬉しいことですね。では、市民の方々に向けて広報物を制作する際、気をつけていたことはありますか。
小原さん:市役所の「お客さん」は全市民であり、どんな人にでも伝わる、分かりやすいものを提供しなければならないということでしょうか。例えば、チラシひとつとっても、漢字を読めない方へのルビ振りの配慮が必要になってきます。そこで、私は自己表現の場としてデザインを制作するのではなく、全市民へ的確に情報を届けることができるように、常に意識しながら制作していました。
―――まさしく市役所ならではの考え方ですね。
―――次に、インターンシップにおいて困難だったことはありましたか。
小原さん:このインターンシップは与えられた業務をこなすのではなく、学生が自ら行動を起こすことを期待する制度なので、最初は何からスタートし、誰と関係性を築いていくべきなのかが全く分からず、苦労しました。また、同期のインターン生との実力の差を感じ、結果を出せるか不安でした。しかし、「分からない」や「知らない」を言い訳に与えられるのを待つのではなく、自ら動いて情報を得ることを心がけたことによって、少しずつできることを増やし、自身のアウトプットの価値を高めることができたと思います。
―――何事にもくじけず行動に移すことは大切ですね。ではインターンシップをとおし、達成感を感じたことはありましたか。
小原さん:インターン期間中の全制作物を掲載した、デザインに関する簡単なノウハウ集を作成することができたときに達成感を感じましたね。また、1年を通じて苦楽を共にしたかけがえのない仲間と出会えた経験も私にとって大切な財産になりました。
―――小原さんにとってこのインターンシップは本当に価値のあるものだったんですね。そんな小原さんがインターンシップをとおして成長したと感じる点は何ですか。
小原さん:インターンシップ参加前と比べて、無用なプライドを捨てて謙虚に教えを請い、かつ物事に貪欲に取り組む姿勢を身につけられるようになったと思います。また、副市長から「物事の切り取り方を見つけることが上手いね。」とお言葉をいただいたことで、自分は、誰かの思いをより多くの人に届く言葉に「翻訳」することや、相手に寄り添いつつ本質を見極めることが得意なのだと気づけました。
―――副市長直轄だったからこそ、変化した姿勢や、気づきがあったのですね。では、学生という立場ゆえの限界がある中でも、どのようなことに貢献できたと感じていますか。
小原さん:従来の広報物を、本市の事業に関して予備知識のない市民に、より的確に情報が伝わるデザインや表現に変更しました。それにより、保健センターの方々に「市民の立場にたって考えることの重要性に改めて気づいた」と言っていただきました。確かに四條畷市民でもない一学生の私では、行政や市に関する知識は職員の方々に及びません。しかし、職員でも市民でもない立場だからこそ、客観的な意見を提供し、市役所と市民の架け橋として少しでも貢献できたのではないかと考えています。
―――最後の質問となりますが、現在していることで、インターンシップの経験が生きていると感じることはありますか。
小原さん:今は、チルドレンズミュージアム・キッズプラザ大阪のワークショップスタッフやwebライター、大学時代の指導教官の携わる叢書(そうしょ)の誌面デザインや校正を担当しています。目的に応じて情報を適切に切り取り、相応しい形で提供する力を得られたこと、そして、「自ら機会を作りだし、機会によって自らを変えよ」のマインドを持つことができたのは、このインターンシップのおかげです。
―――インターンシップで得た力や仕事をするうえでのマインドが、小原さんの現在に大きな影響を与えているんですね。小原さん、貴重なお話ありがとうございました。