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四條畷市では、2017年9月から外部人材として大学生を登用し、行政の枠組みに囚われず、変革を起こすことを目的に、「長期インターンシップ制度」を導入しています。
インターンシップ生は、インターン生ブログの発信や、インターネット番組「なわチャン!」の立ち上げ、親子で利用しやすい店舗マップの制作、公園活用ワークショップの企画・運営、空き家管理データベースシステムの構築など、さまざまな業務で市の課題解決にあたっています。
より多くの方にインターンシップ制度について知っていただくため、過去に活動したインターンシップ生にインタビューを行いました。
今回は、四條畷市にどっぷりつかり、市民の価値を追求しつづけた岩井凌太さんに、現役インターン生(2021年2月現在)のチェリーアンジェラー未来がお話を伺いました。
〈プロフィール〉
1期生 2017年9月~2018年3月活動
当時、同志社大学スポーツ健康科学部4年生
・商店街の空き店舗調査やLINEアカウントを活用した商店街活性化企画
・庁内コミュニケーションツールを改善する企画提案
・インターン生ブログ
などに携わった。
現在は、パナソニック株式会社に勤め、持続可能なスマートタウン開発に携わっている。
―――まず、インターンシップをどのように知り、なぜ応募されたのですか。
岩井さん:私は、4年生の春までイギリスに1年ほど留学をしており、帰国後の4年生の秋から何かしらインターンシップをしたいと考えていました。また、海外在住時や留学中に、海外の観光地を訪れる中で、日本の地方はリソースの宝箱であり、非常に高いポテンシャルを持っているのではないかと考えたんです。というのも、日本では地方によって異なる文化が芽生えており、ご飯も美味しく、自然も多く、さらにホスピタリティも世界的に注目されていました。その中で、帰国後は特定の地方に根を下ろし、その地方の良さを味わい、その良さをさらに磨いていくようなことがしたいと考えるようになりました。また、非常に特異な経歴を持つ東市長と身近で働くことができるということにも魅力を感じました。
―――インターンシップ開始にあたり、意気込みなど、どのようなことを考えていましたか。
岩井さん:市民にとって価値となるものを形に残してから半年間を終えようということだけを考えていました。本当に市民のためになることは何であるのかということを、現場へ行って情報収集し、自分の中で考えつくし、納得した上で生み出したいと考えていました。
―――インターンシップを開始する前から熱い思いを持たれていたのですね。では実際に、主にどの課の職員の方々と、どのような業務をされていましたか。
岩井さん:一から何かを作り出すような業務に取り組んでいました。自身で考えた企画を提案し、当時、市のマーケティングを担当されていた西垣内渉さんと各課の調整を担当していた藤岡調整監にフィードバックをいただき、企画を磨いていきました。LINEアカウントを用いた商店街活性化企画や、庁内コミュニケーションツールを改善する企画も提案しました。また、副市長の提案を受け、どうしたら商店街が活性化するかを検討するための土台として、商店街の店舗利用状況などを「見える化」したものを作る業務に取り組みました。
―――商店街の見える化、とても面白そうな試みですね。具体的にどのようなことをされたのですか。
岩井さん:商店街の空き店舗や家賃、店主やスタッフの関係を聞いて回り、この空き店舗はこのような人に入ってもらうと商店街がこう発展するのではということを考えるための土台作りです。自分で、「こういう情報があったら便利かな」ということを考え、工夫して情報収集しました。休みの日であっても、四條畷市内のカフェに行くなど、半年間は四條畷にどっぷりつかろうと思っていました。出会う人と話す中で、「四條畷市民にとっての価値とは何なのか」ということを考えたかったんです。そのような関わり合いのおかげで、どんなお客さんが来ているのか、店主同士の関係性など、少し聞きにくいようなことをお聞きしても教えていただくことができました。
―――素敵です!岩井さんはたくさんの市民の方々と関わられていたのですね。その中で、気をつけていたことや、意識していたことはありますか。
岩井さん:職員の方々には言いにくいことこそ、学生である私が聞き、生かしていこうと意識していました。さらに、市民にとっての価値は市民が作り出す、つまり、住民自治ができることが一番なのではないかと考えていました。この市をより良い場所にするにはどうすればいいのかという議論の中で、「自分たちで盛り上げていきたい!」という話を市民の方々とできたことには、大きな意義があったと感じています。
―――市民の意思で市を良くするという住民自治こそが価値ということですね。そのほかにも、市民の方々との関わりで印象に残ったものはありますか。
岩井さん:私が市長に同行した「地域と市長の対話会」で、インターン生がお叱りをいただいたことは今でも覚えています。災害時に、災害情報が飛び交っているにも関わらず、Twitterでインターン生ブログの発信を行ってしまったことが原因でした。対話会が終わると、私はその市民の方のもとへ行き、深くお詫びしました。そうすると、周りの市民の方々が、「ここまでしっかりと謝りに来てくれたのだから」と慰めて下さいました。この経験からも、市民の方々と真摯に向き合うことの大切さを学びました。
―――では、インターンシップをとおし、困難だったことはありますか。
岩井さん:「新しいものを作ることは本当に難しい」ということをずっと感じていました。自信を持って提案した企画であっても、その企画を実行するには、いくら投資して、誰を巻き込み、何が課題であるかをきちんと理解することができていませんでした。取り組みの結果、生み出せる価値だけを考えて提案していると、企画がなかなか通らなかったんです。
―――では、そのことをどのように乗り越えたのですか。
岩井さん:「ここから先はわからないので後はお願いします」ではなく、最後まで自分が主導で、足りないパーツをいかに集めていくのかということを考えました。巻き込み力ってよく言われるじゃないですか。あれ、本当に大事!四條畷市で働いていたときは、市民の方々と積極的に関わっていましたが、企画の提案となった時には頭でっかちになっていました。わからないことを助けてくれる職員の方としっかりと対話をし、自分で企画を積み上げていくことは本当に大事だと学びました。
―――では、学生という立場ゆえの限界がある中でも、どのようなことに貢献できたと感じていますか。
岩井さん:データベースだけではわからない課題を汲み取ることができるのは、インターン生の強みだと思います。職員の方々のように必ずやらなければならない業務があるわけではないので、フットワークの軽さを生かし、市内や商店街を日中見て回ることができるんです。歩き回って得た情報と関係性は、数値に出てくる情報と同等に価値が高いものだと私は考えています。
―――最後の質問となりますが、現在していることで、インターンシップの経験が生きていると感じることはありますか。
岩井さん:今は、いわゆる大企業で働いているのですが、内向きの業務や説得が多く、内部の調整がとても大変です。このインターンシップで、誰のために取り組んでいるのかということを強烈に意識していたことが、今の仕事の姿勢にも繋がっていると感じます。仕事を続けていると、忘れがちになると思うのですが、誰のためにしているのかということこそが本当に大事ですね。
―――1期生の岩井さんのインターンシップへかけていた強い思いを知ることができました。岩井さん、貴重なお話ありがとうございました。