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舎利吹観音[しゃりふきかんのん]
弥勒寺[みろくじ]には30センチ余りの観音さまがいらっしゃいます。他の観音さまと違うのは、お顔に点々と舎利[しゃり]が吹き出していることです。(舎利とはお釈迦さまの骨、転じて米つぶのこと)。この由来について弥勒寺には150字ほどの巻物が残されています。それによると
江戸時代の中ごろ、音羽という名の、それは美しい娘がおりました。村一番の器量よしと評判の高いこの娘を、両親は宝物のように大事に育てておりました。ところが不運にも、娘は流行り病の疱瘡にかかってしまい、美しい顔は見るも無残な傷跡におおわれてしまいました。
悲嘆に暮れた娘と両親は弥勒寺の観音堂にお籠りして必死に祈願しました。そして満願の十日目の夜明け、夢うつつの両親の目に写ったのは、もとどおりの美しい顔にもどった娘の姿でした。
親子はたいそう喜び、早速観音さまにお礼を申し上げようとお顔を見上げてびっくり仰天しました。観音さまのお顔には一夜にして舎利が吹き出していたのです。
観音さまはわが身を持って親子の祈りに応えられたのでした。これを聞いた村人は、誰言うともなく「舎利吹観音」と呼ぶようになり、以来、慈悲深き観音菩薩として信仰を集めるようになったといいます。